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幡ヶ山、新暦皐月三齢

やあ、妖組の誰かだよ。名は出さないよ。

この場では初めましてかな?陶幻鄕南西部の霊山幡ヶ山を根城にしている者共だ。以後お見知りおきを。

今日はだね、幡ヶ山の写真を少しだけ載せながら、少しだけ駄弁ろうかなって思う。

なあに、取って食べたりはしない。ゆるりとついてきてくれ。


幡ヶ山にはだね、山頂に大きなお社が、幡ヶ山宮ってのがある。お前らのセカイだと金刀比羅山宮とか言ったかな。そこの、旧参道が心地いいのだ。

それだけと言ってはそれだけなのだが、久しぶりに器が訪れたからな、この場で初めて話題を出すことにしたのだ。


幡ヶ山の稜線に沿って、遊歩道がある。入口は分かりにくいが、ここもお勧めだ。己達の住処だから荒らされたくはないけどね。

特に夜桜には気を付けた方が良い。あいつは、私たちの中で一番危険だ。

今日は外の世界のが一人、鴉々初憑きのそら色共に連れられてやってきたが、白の山菜掘りだけでビビってたからな。己は包丁と鉈、夜桜は……あいつはずるだが、ま、気を付けるがいい。


稜線を進みと広い溜池に出る。晴天の時は気持ちいいだろう?昔はオイカワとかが居たのだがね、いつの間にかぶらっくばすとかいう外来魚のせいでいなくなった。まあ、あれはあれで美味いから私はいいのだけどね。


もうひと山、切り崩された道を通ると御馴染みの稚子桜に出る。夜桜と、昼間はさくら色の小娘がよく来るな。葉桜と晴天がとても気持ちよかったさ。

ところであの小娘、桜のまとめを綴りたいとか抜かして踊ってたが、いつまとめるのだ?もう一月経ったではないか。

いや、別に私には関係がない話だがね。気になるだけだよ。

ま、今宵の話はこのくらいにしておこう。

陽の嵐で空が真っ赤に染まる頃に、郷の外の鬼が暴れていたが、彼奴もじきにここで暴れるのだろうか。


ふふ、おしゃべりがすぎたね。さ、良い子は寝る時間だぞ。妖にxxされたくなければ、な。